「どうして自転車って倒れないの?」最大にして普遍的な自転車の謎。

 

プロ選手の車上排尿は神か悪魔の所業?!
今回も私的なことから始まるのだけど、うちの嫁さんは自転車に乗れない。「乗れない」というのは「乗らない」のとは違う。それは二輪車の上で物理的に能力的に自力制御が不可能ということなのだ。戦前の女性には自転車に乗れない人は非常に多かったと聞くが、今のご時世でこんな人は珍しい。しかも自転車人間である僕の相方として暮らしている女性がこれなのだから、それを知った誰もがまるで狐に憑かれたような顔をする。
そんなわけで嫁さんにとっては、多くの人が自転車をフラフラと操縦しながら街行くこと自体が不思議な現象であり、プロ選手が自転車の上で食事をしたり排尿することなど宇宙の理論から逸脱した神もしくは悪魔の所業のように見えるらしい。
まあ考えてみれば、僕も自転車に乗れない幼稚園の頃は、兄ちゃんたちが颯爽と銀輪で風をつんざく姿を異次元世界のように眺めて「どうして自転車は倒れないのか?」って思ったもんだ。

 

地球も自転車も「ジャイロ効果」で回ってる。
ある説によると自転車が倒れないのは「ジャイロ効果」という物理的現象によるものだという。なんでも車輪がグルグルと回転するとその遠心力によって回転軸の位置を安定させるらしい。三本ローラー台を考えてもらえば分りやすいけど、あれって自転車は前に進んでいないのに車輪が回転しているあいだは倒れることがない。それがジャイロ効果なのだ。
ところで巷では「ジャイロホイール」という物が子供用自転車の走行補助用に販売されているのだけど、これがナカナカ不思議なもんである。16インチ(12インチもある)で見た目はディスクホールみたいだけど、内部のフライホイールを高速回転させてジャイロ効果を発生させることにより「絶対に倒れない前輪」となっている。YouTubeの動画を見ると、小さな車輪が単体で確かに自立しておる。押しても蹴ってもフニャリ!と復元して直立を保ち、まるで魔法のようである。
この「ジャイロホイール」。なんだか自転車以外でもいろいろ活用できそうだなあと思った。例えば正確な角度で背中に固定すれば「猫背矯正ギブス」になるのではないか?
または、ボクサーの体幹にいくつか取り付ければ「絶対ダウンしないギブス」にもなるのではないか? ボッコボコにされて気を失ってもゾンビのように起き上がりつづけるので、そのうちに相手が恐れをなして降参するとう凄い兵器だ。もちろんパンチドランカーとしての終生がオマケとして付いて来るけど。
さて地球の自転軸もジャイロ効果によって太陽に対し安定を保っている。そんなわけで僕らの地球には美しい四季が巡ってくるのだ。考えてみれば、自転車がジャイロ効果によって倒れず走れるのと、地球が自転を安定させていることは同じ現象によるものなのだ。よくまあ明治時代に「自転車」という和訳を考えたもんだ。そう思うと、自転車に乗ることでジャイロ効果を介した宇宙の営みを感じ、大らかな気分になれることもよくわかる。うちの嫁さんも自転車に乗って宇宙の英気を感じることができれば、僕が汚れたパンツを脱ぎ散らかしても、カミナリを落とさず大らかに過ごせるのではないのか~?!

 

自転車界最大の謎が今もって解明されていないとは?!
一方で研究によると「自転車が倒れないのはジャイロ効果だけが要因ではない」という説も上がっている。とりわけ、重要なのはキャスター角、つまりフロントフォークが傾斜していることである。右に倒れかけたら反射的に左にハンドルを切ることによる復元力が「自転車が倒れない要因」とも言われている。
しかし、さらに最近の研究では「ジャイロ効果もキャスター角も自転車が倒れないために、とても小さな影響しかなく、けっきょく自転車が倒れないのは乗っている人間がバランスを取っているから」って説があげられている。なんじゃそりゃあ~。当たり前の事みたいやん?! まあ。確かにトラックレースでもスプリント競技では相手の後方を取り合うため「スタンディングスティル」と言って、20分以上も自転車に乗ったまま静止するというテクニックが披露されていたからなあ。バランス取るのが上手けりゃジャイロもキャスターもへったくれもないってことか?
いろいろ調べて、たどりついた最後の理論によると「自転車がどうして倒れないかは現代の科学では正確にわかっていない」だと。自転車の解明されぬ奥深さに感嘆するけれど、ああ、夫婦でサイクリングに行く夢はかなうのやら。とりあえずジャイロホイール買いにいこか。