自転車の上で便意と精神をコントロールしよう!

 

下りでオナカが冷えると恐怖のビッグバンが僕を襲う
とても個人的なことなのだけど、40歳を過ぎたあたりからどうもオナカが緩くなってイカン。胃腸だけじゃなく、肛門の括約筋まで緩くなってしまって、放屁しようとしたら「実」までオハヨーさんと顔を出すことすらシバシバあるくらいなのだ。
僕にとってライディングの下りは危険極まりない。コントロールを失ってクラッシュするからではない。登りでかいた汗が下りで腹部を急激に冷やすと強烈な便意になって襲いかかってくる。これがすなわち危険なのだ。特にこれからの季節は要注意だ。
ある時、下りきってオナカが冷え冷えのピーピーでビッグバン寸前だったことがある。脂汗かきながらトイレを探すが、コンビニもない片田舎。小さな公園と公衆便所を発見できた時には嬉しさのあまり、ますます便意が高揚するし。やばい(汗)。自転車盗まれちゃイカン。でもカギもない。車輪外して便室に放り込む。ほとんどパニック状態に陥りながら、ジャージーとビブパンツをズッコケながら脱いで間一髪で脱糞に成功。でも、我にかえって、俺どうしてこんな見知らぬ土地で自転車と一緒にウンコしてるんやろ?って。しかもハダカやし! なんか変な気分。
そんなわけで、ツールのアルプス越えの中継をテレビで見ていても、人ごとながら心配でしょうがない。選手諸君よ。大汗かいて高速の下りで、冷たいドリンクをゴクゴクしたら余計にオナカ冷えるやないの。チビらんといてや。まあ一流プロは内臓も超一流なんでしょうが。

 

ジルベールに変身したら便意をもよおすのだ?!
さて、便意の原因は冷えによるものだけではない。精神的な作用がそれに影響するのはよく知られている。一般的には興奮覚醒状態が高まると交感神経の働きが活発になり、便意が抑えられる。逆に副交感神経に支配された状態、つまり安静リラックス状態には便意がもよおされるという。つまり活動している時にウンコは出にくくて、のんびりしている時ほどウンコがしたくなるということだ。しかしながら、精神状態と便意の関係には個人差があって、一概に語れるものではない。だから、多くの人は緊張すると便意をもよおす。そして「過敏性腸症候群」ではストレスがかかると、便秘をする人や下痢をする人など症例は様々だ。ウンコがしたくなる精神状態は人それぞれ違うのだ。
僕の個人的なことを述べるなら、トレーニングの登り坂でフィリップ・ジルベールに変身してしまうと便意をもよおすことがある。いつも走っている南河内グリーンロードの短い登りを追い込みダッシュすると、いつしかジルベールがのり移って、「ホアキンもサガンもぶっちぎったるで!」と。元世界チャンピオンのプレッシャーと変な高揚感が複雑に絡み合い、胃腸がキュルキュルと締め付けられる。その後、下りで急速冷却だから当然オナカも「下る」に違いない。

 

どうして本屋にいくとウンコしたくなるの?
ところで「青木まりこ現象」って、ご存知だろうか。それは精神と便意を考える上で面白い現象だ。1985年に椎名誠が編集長を勤めていた「本の雑誌」の「なんでも質問コーナー」に、青木まりこさんという女性から「私は本屋にいるといつも便意をもよおしてしまいます。どうしてでしょうか?」との投稿が載せられたところ、多くの人が同様の体験をしているとの大反響が寄せられ、「青木まりこ現象」は一躍時代の注目を浴びた。
この原因を究明するため数々の高名な学者が考察を重ねたそうな。「本屋の静かな空間がリラックスさせるから」とか「本を読むことによる新たな探究心でワクワクするため」とか「本のインクのニオイが便意を誘発するから」とか、色んな説が囁かれたけど、けっきょく真相は謎のままなのだ。
要するに「青木まりこ現象」も「過敏性腸症候群」も「ジルベール便意現象」も、精神と便意の密接な関係を示唆しているが、やっぱりそれらは一概に語れるものではないようだ。そんなわけで、過敏便意性おっさん選手として「サドルの上で脱糞しない方法」を経験上からアドバイスしてみたい。
まず、オナカを冷やさないのは絶対条件。寒い季節の下りでは使い捨てカイロやビニール袋を懐中に仕込みたい。前日の深酒と水分の過剰摂取もあきません。エビオスやビオフェルミンなど整腸剤を常用するのも一つの手段。そして、一番大事なのは自分の精神状態と便意の関係を普段から把握して、緊張や追い込みでも心の余裕をもてるようコントロールすること。自分のことをジルベールだなんて思ったらアカンよ。