二大自転車素材「カーボン」と「アルミ」は日本のマインドに彩られているのだ!

 

エポキシ樹脂と炭素繊維のラブゲームが高性能フレームの秘密
昨今の自転車素材の主役がカーボンなのは間違いない。フレームはもちろん、リムからスポーク、ハンドルにステム、果てはサドルやシューズに到るまでカーボン素材が所狭しと車輪上を陣取る。この調子だとそのうち、「カーボンのチェーン」や「カーボンのスプロケット」なんかが登場する日も遠くないのでは?なんて思う。
さてそんな「カーボン」、実は日本で発明されたものらしい。で今回は「日本で発明された自転車素材」についてハチマキをひねってみた。
いきなり脱線するけど、皆さんが「カーボン」と呼んでいるアレ、工業素材としての正式な名称は「炭素繊維強化プラスチック」と言うらしい。つまりその母材はあくまでエポキシ樹脂に代表される「プラスチック」であって、カーボン繊維は剛性化のための補助的な物に過ぎないのだ。だから「カーボンフレーム」じゃなくて本当は「プラスチックフレーム」なのだ。でも、エポキシ樹脂だけでフレームの形を作ってもグニャグニャで使い物にならないし、逆にカーボン繊維は強靭な引っ張り強度があるけれど単体では形にもならない。考えてみれば、そんな二つが長所と短所を埋めあうことにより最高のパフォーマンスを発揮することができるとは、まるで男と女の作用反作用で構築される世の中の縮図のようでもある。

 

大阪生まれの「カーボン」にはナニワの文化が集積されている
炭素繊維強化プラスチックを構成する「カーボン繊維」には大きく分けてPAN系とピッチ系という二つがあるのだけど、一般的に自転車素材として利用されるのは「PAN系」というやつで、歴史をひもとくとこれが日本で発明されたものらしい。1961年、大阪にあった通産省の工業技術院大阪試験場で進藤昭男氏によって産声をあげたとある。そうだったのか! カーボン繊維は大阪生まれやったんや! いやいや生粋の大阪人の僕としてはメチャうれしい話である。当然開発に携わった人たちはタコ焼やお好み焼きを食べただろうし、ボケと突っ込みに翻弄されながら新世界で串カツに舌鼓を打っただろう。吉本新喜劇を見て腹を抱えて笑った後に千日前のキャバレー「フレッシュ」で文字どおりフレッシュしたかもしれない。そうした精神的ファクターがカーボン発明の大きな原動力になったことは予想に難くない。つまりカーボン発明のマインドの奥には大阪のベタな文化が集積されているということなのだ! そうだ。ヨーロッパのプロツアーで走るカーボンフレームの集団には大阪の息吹が舞い乱れているのだ。そんなことを思いながら、パリ-ルーベを見ていたら不思議な感覚に囚われた。うーん。なんかカンチェラーラが河島英五に見えてきたで・・・。

 

超々ジュラルミンのデュラエースは「ゼロ戦の末裔」なのだ
日本で発明された主役級の自転車素材は他にもある。僕らがアルミと呼ぶ「超々ジュラルミン」がそれだ。A7075として呼称されるこのアルミニウム素材は軽量で強度剛性に優れ、現在の自転車フレームや部品のほとんどにはそれをベースとしたものが使用されている。
1936年の第二次大戦前夜。住友金属工業が海軍の依頼によって開発した新素材は従来のアルミニウムの性能を遥かに凌駕し、当時新兵器として開発中だった零式艦上戦闘機つまり「ゼロ戦」に使用された。ゼロ戦の優秀性は今さら述べるべくもない。超々ジュラルミンの発明なくしては「永遠のゼロ」の感動もショボイもんとなっていただろ。そんな戦闘機の機能をそのまま現代に踏襲する、ロードレーサーはまさに「ゼロ戦の末裔」だ。
そんなこと考えると、また妄想わいてきた。チームTTの隊列はまさしくゼロ戦の編隊飛行のようだし、キンタナに敬礼させたらラバウルの二等兵やがな。
いずれにしても現代自転車素材の二大スターである「カーボン」と「アルミ」の両方ともが日本で発明された物だとは、まったく日本人として誇りに感じるなあ。あとは乗り手が世界を制すれば、もはや地球上の自転車界は日本の完全支配下にあるといっても過言ではない! ちなみにその昔ドーピングによく使われたメタアンフェタミンも日本の発明らしいので、そんな化学技術を選手強化にうまく活用できないかなあ。ってかなり脱線してますかぁ?!