お酒を飲みながらぼんやり自転車に見とれてしまうことってない?
フィボナッチ数列と黄金比から見るロードバイクの美しさとは>

 

リカちゃんという異人種
 タクリーノにはいろんなタイプの人種が訪れるのだけど、中でも異色なのは「リカンベント」という人力移動車に乗る人たちだ。それは細長くて車高の低い自転車のようなもので、彼らは仰向けにふんぞり返って空を見ながらそれを走らせるらしい。彼らは自分たちのことを「リカちゃん」と呼ぶところがけっこうキショイ。けれど話をすれば面白い人も多い。
 そんなリカンベントという異質な乗り物と異質な人種を目の当たりにして、僕的に感じたことは「ロードバイクってやっぱり美しいなあ」ということだった。僕自身はシュパーブのリアメカを眺めて酒を飲みながら、そのデザインの美しさに感動するような趣味はない。だけどリカンベントと比べるうち、ロードバイクには説明するのが難しいような自然の摂理に裏打ちされた魔物のような美しさがあると直感的に思ったのだ。そして考えをめぐらせるうち、僕はそこにあるひとつの理由を見出した。

 

フィボナッチ数列に見る自然の摂理
 それは以前読んだ「ダビンチコード」に出てくる不思議な数列の話がヒントだった。
その数列はフィボナッチ数列と呼ばれるもので、具体的に言うと「1、2、3、5、8、13、21、34、55、89、144・・・」というものだ。見ての通り1と2を足せば3。3と一つ戻った数の2を足せば5。その5に一つ戻った数の3を足せば8。8と5を足せば13と。同じ要領で隣同士の和にもう一度前の数を足せば出来上がる数列の事である。

 この数列は実にユニークな不思議に包まれていて、自然界のいたるところにその痕跡を見ることが出来るらしい。
 どういうことかと言うと。フィボナッチ数列の隣り合う数の商(割った数のことです)は5以上になるとすべて約1.6で、数が大きくなるほど「1.618・・・」に近づく。例えば144割る89は「1.6179」だ。そうして出される「1.618」という割合が実は不思議ですごいものらしい。
 例えば惑星の公転周期は大まかに言ってすべて1.618倍(誤差±5%以内)になっているらしい。つまり水星は太陽の周りを約88日をかけて一周するのだけど、金星はその約1.6倍の2乗の220日で一周する。そして金星の公転周期の1.6倍が地球の公転周期と重なり、天王星までそれが規則正しく続くそうである。他にも貝の渦巻きの幾何学的係数や、株価の上下推移にまでこの1.618という数字が登場し何やら宇宙のすべての法則はフィボナッチ数列と「1.618」によって牛耳られているかもしれないなんて思うのだ。

 

ロードバイクの美しさは二重の黄金比なのだ
 この「1.618」という数字は、自然に多く見受けられるがゆえ人間は何万年という経験的な美意識の蓄積により1:1.618の構図をなんだかキレイな物として見てしまうものらしい。それを僕たちは「黄金比」と呼んでいる。ミロのビーナスの縦の線と横の線の割合。十字架。美人の顔の縦と横。それらはすべて1:1.618である。A4やB5の用紙サイズもかつては黄金比がルーツだった。
 結論的に言うと、ロードバイクがリカンベントにはない美しさを放っている理由というのが、まさに黄金比に裏打ちされたものではないのだろうかと思うのだ。
 具体的には、カッコのよいロードバイクの写真の「前後輪の先端を結ぶ線の長さ」と「底辺とサドルの位置までの長さ」を定規で測って割り算してみて欲しい。なんとそれはまさに「1.618」に限りなく近い数値であるのだ。さらに「前ハブと後ハブを結ぶ線の長さ」と「その線からサドルまでの長さ」も計算してみよう。これもやっぱり「1.618」にとても近い値なのだ。つまりロードバイクの中には「黄金比」が二重になって存在しているのだ。だからこそロードバイクから発せられる魅惑の美しさに僕たちは刺激されるのじゃないのだろうか。
 そんなわけでつまりロードバイクの美しさとは、フィボナッチ数列や黄金比を根底とした宇宙の摂理に由来するものなのだ! って、おおげさな結末になりました。
ちなみに「リカちゃん」は、なんだか別世界から来たようなタイプの人が多いから、リカンベントの美しさとは異次元世界の黄金比に準じたものなんだろうね。